70歳老人の食品学雑記帳

食品学を正式に学んだことの無い70歳の老人が、独断と偏見による食品学を書き綴っています。

抽出速度とコーヒー成分の移動過程

焙煎コーヒー豆粉砕物粒子からのコーヒー成分抽出は、水(熱湯)を使って抽出するわけですから固液抽出です。

その機構は、基本的に、焙煎コーヒー豆粉砕物粒子(抽出原料 | 抽料)内への水(熱湯 | 抽材)の浸透→吸収→コーヒー成分(抽質)の溶解→焙煎コーヒー豆粉砕物粒子(抽料)組織内の拡散→焙煎コーヒー豆粉砕物粒子(抽料)表面からの外部抽出液(コーヒー成分が溶けている水orお湯)への移動という過程から成り立っていて、これらの過程のうちで、焙煎コーヒー豆粉砕物粒子(抽料)組織内の拡散が抽出速度の律速過程(一番遅くなる段階)だと年老いた珈琲豆焙煎屋は考えています。

ということで、コーヒー成分の抽出速度を物質移動の観点から考えてみました。もちろん、全てが年老いた珈琲豆焙煎屋の独断と偏見による妄想で構成されているわけですが。

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焙煎コーヒー豆粉砕粒子内外のコーヒー成分濃度分布

コーヒー成分の移動過程(物質の移動過程)

上の図は、焙煎コーヒー豆粉砕物粒子の内部から外部の液層(抽出液)へコーヒー成分(抽質)が移動する過程を図にしたものです。もちろん、年老いた珈琲豆焙煎屋の思い込みで制作した図ですから信用度がものすごく低いわけですが・・・。

焙煎コーヒー豆粉砕物粒子を球形とて、その半径方向の位置を半径r として、一定の時間におけるコーヒー成分濃度(溶質濃度)の変化、焙煎コーヒー豆粉砕物粒子表面のコーヒー成分の移動速度は、下の式で表現できると年老いた珈琲豆焙煎屋は妄想しています。

流速=-焙煎コーヒー豆粉砕物粒子内におけるコーヒー成分の拡散係数×(コーヒー成分濃度÷焙煎コーヒー豆粉砕物粒子の半径)

 

境膜抵抗の影響

焙煎コーヒー豆粉砕物粒子からのコーヒー成分抽出の物質移動過程は、焙煎コーヒー豆粉砕物粒子内の拡散と焙煎コーヒー豆粉砕物粒子表面にできる固液界面である液境膜内の拡散から成り立っていると年老いた珈琲豆焙煎屋は考えています。

境膜/2016年頃のWikipedia より引用

境膜とは、固液、固気接触系、あるいは二相流体系において流体が相対運動をしている場合に相境界に存在する、層流状態が保たれている極薄い領域のことである。

この領域においては、熱の移動は熱伝導、物質の移動は分子拡散によって起こると考えられる。

回分式抽出槽内に占めるコーヒー抽出液の体積割合が1に近い場合、コーヒー抽出液中の濃度はほぼ一定となると考えているので、回分式抽出槽内での抽出過程は、温度一定の媒体(コーヒー抽出では熱い水)中に置かれた物体の非定常伝熱に相当すると年老いた珈琲豆焙煎屋は解釈しています。 

定常伝熱

固体内のある場所の温度が、時間的に変化しない状態での熱伝導。一つの場所に注目すれば、どれだけ時間が経過しても、温度が変化しない熱伝導

その逆が、非定常伝熱だと考えています。

参考までにですが、回分式連続式について、その概念を調べてみました。

回分式

投入・反応・回収のプロセスを順番に一つずつ行い、それらをセットとして回数を数える方式。

連続式

投入・反応・回収を全て同時に行うので、操作に途切れがない方式。

ビオ数が小さくなれば、固体である焙煎コーヒー豆粉砕粒子内から外部の抽出液(コーヒー成分が溶解・分散している熱い水)への物質移動速度(コーヒー成分移動速度)に対する液境膜抵抗の影響が無視できなくなると考えられます。しかし、コーヒー成分の抽出操作において境膜抵抗を無視しても、ほとんど影響が現れないと考えられます。

ビオ数

固体内部の熱伝導と表面からの熱伝達量の比率。ビオ数が1を超えれば固体内部の熱伝導が遅いことを示し、固体内部での温度勾配が無視できなくなります。

ビオ数で使う熱を、抽出したコーヒー成分に置き換えると、コーヒー成分抽出の式に使えると年老いた珈琲豆焙煎屋は考えています。

 

分配係数

化合物全体の疎水性を表す数値。

Wikipedia 曰く、化学物質の疎水性や移行性を表す指標となる無次元数で、対象とする物質が、ある2つの相の接した系中で平衡状態にある場合を対象として、各相の濃度比またはその常用対数で示す。

水と油のように混じり合わない2種類の液体を同じ容器に入れ、カフェインのようなどちらの液体にも溶ける第3の物質を加えてよく振ると、両方の液体中のカフェイン濃度の比は最初に加えた量にかかわらず一定となる。このときの濃度比を、対象となる物質の分配係数という。実際には、水と油のような液体同士の場合以外に、固体と液体の場合でも分配係数は求められる。

wikipedia/分配係数より引用

コーヒー成分の抽出での分配係数は、平衡状態にある焙煎コーヒー豆粉砕物粒子内の抽出液と外部の抽出液の間におけるコーヒー成分濃度(溶質濃度) の関係を表す係数となるのだと思います。

焙煎コーヒー豆粉砕物粒子内の熱い水に溶けない(or分散しない)成分にコーヒー有効成分が吸着しないと仮定するならば、コーヒー成分の抽出での分配係数は、焙煎コーヒー豆粉砕物粒子内に存在している抽出液の体積比の逆数に等しくなることも有り得ると思います。

ただし、抽出されるコーヒー成分が高分子で、細胞膜が未損傷だと抽出されないこともあると思います。

焙煎コーヒー豆粉砕物粒子内に存在する抽出液の体積は、焙煎コーヒー豆粉砕物粒子の空隙率に依存しているのだと思います。しかし、焙煎コーヒー豆粉砕物粒子は、抽剤(熱い水)を吸収すると膨潤するので、乾いた状態の時の焙煎コーヒー豆粉砕物粒子の空隙率で体積比を考えることはできないとされています。

 

フィックの法則

フィックの法則は、物質の拡散を考える上での基本法則と言われています。 フィックの法則には、2つの法則があります。

1つ目の法則は、定常状態拡散です。拡散流束は濃度勾配に比例するという法則で、拡散による濃度が時間に関して変わらない時に使われています。

2つ目の法則は、非定常状態拡散です。拡散における濃度が時間に関して変わる時に使われています。

コーヒー成分抽出における拡散は、後者の非定常状態拡散です。

 

固体内拡散係数

拡散

粒子、熱、運動量などが自発的に散らばって広がって行く物理現象で、輸送現象の1つ。

例えば、赤インクを水の中に滴下すると、赤インクが水の中で広がって行く現象や、コーヒー豆焙煎で発生した煙が煙突から空気中に広がって行く現象など。

ちなみに、溶媒が半透膜を通して拡散する現象を浸透と呼んでいます。

焙煎コーヒー豆粉砕物粒子もそうですが、天然物固体原料からの成分抽出は、細胞組織構造の影響を受けて複雑になっています。ですから、固体内拡散係数を利用して計算する場合は、原料の前処理や抽出条件を考慮する必要があると言われています。

例えば、焙煎コーヒー豆を事前に粉砕する、90数度の熱湯でコーヒー成分を抽出する、などなど・・・。

焙煎コーヒー豆粉砕物粒子内での熱い水に溶解したコーヒー成分の拡散は、複雑な焙煎コーヒー豆粉砕物粒子構造の間隙に存在するコーヒー抽出液部分を経路とするわけですから、焙煎コーヒー豆粉砕物粒子内での拡散係数は、間隙に存在するコーヒー抽出液部分の拡散係数と関係があると年老いた珈琲豆焙煎屋は考えています。

 

固体内部構造の影響を受ける有効拡散係数と溶液中の拡散係数の関係

固体内の拡散係数=(固体内の細孔の体積割合×溶液の拡散係数)÷屈曲係数

【屈曲係数】とは、固体内の代表長さに比べて、固体内の拡散距離が何倍か大きくなっていることを反映した係数

細孔に狭窄部があったり、固体を構成する不溶性成分への溶質の吸着現象によっても、固体内の拡散係数は、溶液中の拡散係数と異なった値になります。

 

例えば、カフェインの拡散

低分子であるカフェインの水中(70度の熱水)における拡散係数は、平均粒径0.5㎜の焙煎コーヒー豆粉砕物粒子内の拡散係数と比べると、2~10倍程度の差があると言われているので、これに高分子のコロイド粒子が混ざると1000倍くらいの差になると言われています。

ちなみに、カフエインは水にもオイルにも溶けると言われています。

コロイド粒子の拡散係数ですが、焙煎コーヒー豆粉砕物粒子内での拡散係数に対する温度の影響は、粘度を介しても現れるとされているので、焙煎コーヒー豆粉砕物粒子内拡散係数の温度依存性は高くなると考えられます。

膨潤した焙煎コーヒー豆粉砕物粒子内のカフェイン拡散ですが、25度~85度の温度の間で、活性化エネルギーは32KJ/mol で、外部の抽出液中での自由拡散と比べると約2倍だとされています。

このように、固体内拡散の活性化エネルギーが、固体外の溶液中での自由拡散に比べて大きくなる理由は、溶質の拡散に対して細胞壁や細胞膜が影響しているからだと考えられているようです。

 

【おまけです】

アマゾンで販売しているコーヒー関係の書籍を何冊か紹介させて頂きます。紹介文は省略しています。 

コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか (ブルーバックス)

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  • 作者:旦部 幸博
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/02/19
  • メディア: 新書
 
コーヒー「こつ」の科学―コーヒーを正しく知るために

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  • 作者:石脇 智広
  • 出版社/メーカー: 柴田書店
  • 発売日: 2008/09/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える 世界一美味しいコーヒーの淹れ方

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  • 作者:井崎 英典
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2019/12/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
珈琲の世界史 (講談社現代新書)

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  • 作者:旦部幸博
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/10/18
  • メディア: Kindle版
 
コーヒー抽出の法則

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  • 作者:田口 護,山田 康一
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2019/02/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)